「車椅子の物理学者」としておなじみのスティーヴン・ホーキング博士。今月8日に誕生日を迎えて74歳となったが、現在も精力的に活動を続けている。

26日にBBCラジオで放送される、ブラックホールについての番組にも出演する博士。その収録の際、「Radio Times」の取材に応えたのだが、そこで非常に興味深い発言が飛び出した。なんと、人類が100年以内に滅んでしまうかもしれないというのだ。

 

 

■本当の脅威は天変地異ではない

人類が滅んでしまうというからには、とてつもない大災害でも起こるのだろうか。しかし博士は、1000年先までに人類の存在を脅かすような大災害が発生する確率は非常に低いと話す。さらに、これから100年ほどたてば人類は宇宙にコロニー(人工居住地)を持つようになり、地球外でも暮らせるようになっているため、大災害が人類の危機に直接繋がることはないのだそうだ。

問題はそれまでの間、つまりこれからの100年間だ。人類はまだこの時期、地球外に脱出する術を持っていない。つまり、地球上での混乱がそのまま人類の危機へと繋がっていく状況にある。それにもかかわらず、人類を滅ぼすような危険なものが、すでに多く存在しているのだ。

博士は人類を危機に直面させる具体的な原因として、「人工ウィルス、軍拡競争、核戦争、地球温暖化、加速器を使った素粒子の実験」などのリスクを挙げている。これまでにも、加速器の実験人工知能の危険性などに警鐘を鳴らしてきた博士だが、改めてその脅威を知らしめた形だ。

 

■科学が人類を終焉に導く?

これらの脅威は、博士と同様に、宇宙物理学の権威であるマーティン・リース博士が2003年に発表した本「今世紀で人類は終わる?(原題:Our Final Century)」(草思社)でも詳しく述べられている。現代は、科学が人類に甚大な被害をもたらす可能性がある時代なのだ。悪意のある者が科学的知識を持ち、行動を起こすのならばなおさらである。普段は宇宙を見ている博士らが、地球上の方がよっぽど危険であると考えるほど、事態は深刻だ。

実際に、日本では20年以上も前にオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きているのだから、われわれにとっても他人事ではない。これがもし、さらに大きな団体によって引き起こされたならば……、想像するのもおぞましいことだが、現実としてありうるのだ。

 

もし、ISが化学兵器をフル活用してテロを行ったらどうなるのか、また、陰謀論的な視点では、闇の組織が人口削減を強行したらどうなるのか。そのようなことに考えを巡らせると、人類の危機が迫っているというのも、あながち大言壮語でもないように思える。

■人類が誤った道を歩まないために

ホーキング博士は、新しい技術が間違った方向に進む可能性があることを強調し、それを扱う人類のあり方について次のように話している。

「人類はこれからも歩みを止めないし、引き返すこともしない。だから、科学の危険性をよく認識して、リスクをコントロールできるようにするべきなんだ。私は楽観的だから、人類にはそれができると信じているよ」

科学技術は社会を大きく変えるのだから、それが正しい方向を向いていることを確実にしていくべきだと指摘する博士。これはつまり、民主主義の世界においては、人々が科学に対する基礎的な理解を持ち、確かな知識に基づいて自分たちの未来について意見を表明できる必要があるということだ。

最近博士が、メディアの前で話題となるような発言を繰り返しているのは、まさに、人々に科学への感心を持ってもらい、それぞれのトピックに対し、自分の力で考え、意見を述べられるようにするためであるといえる。博士はそれを、科学者としての責務だと考えているのだ。

それでも、悪意を持って人類に仇なす輩はいつの時代もいるだろう。しかし、それに対抗する人々の科学リテラシーを高めることで適切な対応ができれば、滅亡リスクを少しでも減らせるかもしれない。これからまた、メディアを通して博士の過激な言動が伝えられることがあれば、それは博士が、科学者として人類に対して負っている責任を、行動で示していることにほかならない。